August 18, 2012

今回の日本滞在も残り少なくなってきて
色々なものに少しずつ別れを告げながら

私の海外生活も人生の半分を越えてきていて
物理的な移動はもうさすがに慣れたものだけれど
大切な人たちに、じゃあまた向こう戻るね、と
言う度にやっぱり心の中では涙が出る

圧倒的に遠く孤独で、そばにはいられないし
いざとなってもすぐに会える距離にはいない
母国以外の国で暮らすってこういうこと
海外で生きるってこういうことなんだ
改めてそう思う

認知症が始まってしまった祖母にも
最後にバイバイ、と言って
例え認知症でなくても会う時にはいつだって
これが最後かもしれない、と思ってきたものだけれど
人間はやっぱり幸せな生き物で
そのことを普段は忘れてしまう
でも日々少しずつ色々な物事を忘れていく祖母を前に
きっとこういう時間はもう二度と戻らないということを
ちゃんと祖母が生きて目の前にいる間に
感じなければいけないなと思う
そして、周りの人間は忘れ始めた人を前に
なんとかそれを食い止めようとか、
忘れないようにさせよう、と頑張るらしいけれど
私はどんどんどんどん忘れていけばいいと思う
今はまだわかっている私のことも
祖母はいつか忘れていくと思うけれど
それはちっとも悲しいことではないし
それが人間本来の姿であり
 かかる時間や時期は違えど
 誰しもがいつか必ずそこに辿り着くんだから

それは私には頑張って生きたからこそ許される
ご褒美みたいにみえる
もう充分頑張って生きて苦しんだんだから
お疲れさま、もう全部忘れていいよ、
と言われているような
祖母にもそうやってただ本能のままに
祖母が一番幸せな状態になって
また会える日まで楽になっていってほしい

束の間、東京での休憩を経て
来週から音楽祭のため信州へ
恩師が来日し、アテンドやレッスンの通訳など
怒濤のスケジュールが待っている
その後すぐ海外へ
さて、二つの旅のパッキングを始めなくては
*先日、『トッカン 特別国税徴収官』を
ご覧になって下さった皆様、ありがとうございました*
テレビ収録は、普段のコンサートとはまた違った音楽の仕方でもあり、まだまだ至らないことだらけですが、うまく言葉にできないけれど、20代で仲良くできなかった人たちと30代では仲良くできる、そういう種類の音楽な気がしています。自分がなにも定まっていなかったらとても辛いし無理だけれど、自分自身を極めれば、寛容になれる、なんとなくそういう気持ちな気がします。
監督始め、スタッフの皆様、キャストの皆様、ありがとうございました*
 
*写真*
(上)重要文化財・旧三笠ホテルへの道@軽井沢
自転車に乗れない私を二人乗り用自転車の後ろに乗せて
坂道をガンガン登ってくれる体育会系女子と

(中・下)
たまたま通りかかった湖と
たまたま見つけた可愛い教会・森のチャペル軽井沢礼拝堂

August 15, 2012

『トッカン 特別国税徴収官』

本日8/15(水)夜10:00~オンエアの
日テレ『トッカン 特別国税徴収官』

その撮影風景を少しだけ
今回メインの舞台となったとある音楽大学
私が通っていた米シカゴの音楽大学は
元々はホテルとして建てられた建物であり
また歴史的建造物になるようなとてもとても古いキャンパスで
自分のレッスン中にも隣の部屋での声楽のレッスンなどが
がんがん聞こえてきてしまったりするのが日常茶飯事だったので
日本の清潔で防音設備のしっかりとしたキャンパスに驚きました

そして
撮影風景
エキストラの方々も入り
女優さんのメイク直し中
吹き替えのスタンバイをする私
その他スチール撮影などもあり
劇中の中ではほんとうに一瞬しか
映らないようなシーンであっても
細かく細かく撮影していく過程を見ると
とても薄っぺらい言い方になってしまうけれど
適当な気持ちで見てはいけないな、と思い直します

いつだったかあるピアニストの方が
孤独なのは舞台の上だけで充分だから
舞台の上以外の時は沢山の人といたい、と言っていたけれど
音楽家はわりと個人作業の多い人生なので
こうして沢山の方々と一つの作品を創っていくということは
もちろん突き詰めればこれも個人の内なる作業の塊であったり
色々な側面があるとは思いますが
とても単純な意味で素敵だなぁとほんとうに思います

August 03, 2012

あっという間の1ヶ月
日本はほんとうに時間の進むスピードが速い 

それはやっぱり私にとって日本が母国で
周りの人間全員が母国語である日本語を話し
ほんとうなら自分には不必要な情報までをも
そういう判断をするまでもなく無意識のうちに
見てしまったり聞こえてきてしまったりするからなんだろう

外国にいると
そういうほんとうの意味で必要のない情報は
自ら求めなければ入ってくることはほとんどなく
またその量や質をコントロールすることが簡単なので
見すぎたり聞きすぎたりすることがない
そういう生き方の心地良さを一度知ってしまうと
日本の便利で平和すぎるが故の時間の速度に
疑問を持ったり違和感を感じたりする

そして、世界はオリンピック一色

競泳の北島康介選手が
100分の1秒、爪1つ分くらいのタイムを縮めるのに
3年間かかった、と言っていたけれど
今日の自分が昨日よりどうなったのか
今の自分の実力が3年前よりどう成長したのか
そういうことがタイムという形として
目に見えてしまうスポーツの苦しみ

反対に音楽は
今日の自分の音楽が昨日よりどうなっているのか
そういうことは形として一切目に見えない苦しみ
毎日毎日、納得して練習を終えるタイミングも見えてこない
今日進歩することができたのかもしくは後退してしまったのか
そういうことは現実の手触りとして見ることはできない

どちらがどうという問題ではとても片付けられないけれど
唯一共通するのはどちらも孤独な戦いであること

私は物理的な意味の孤独ではなく
精神的に孤独な人間がとても好きなので
そういう弧の戦いをしている人は魅力的で
だから私自身も音楽を通して
孤独な戦いが続けられるような人間になれたらと思う


*お知らせ*
この度、井上真央さん主演日本テレビ連続ドラマ
『トッカン 特別国税徴収官』第5話にて、
ヴァイオリン指導及び吹き替えをさせて頂きました。
オンエアは、8/15(水)22:00~22:54の予定です。

詳しくはこちらまで。

 *写真*
いつかのシカゴ、ダウンタウンの反対側。
ミシガン湖の誰もいないプライベートビーチにて。
湖もここまで大きいと波があるんだ!と驚いた。
でも湖なので塩の匂いはしないところが、
ミシガン湖のビーチの好きなところ。